リングにかけろ

 作者

車田 正美

リングにかけろ (1) (集英社文庫―コミック版)
 出版社

集英社

 あらすじ

プロボクサーであった父を早くに亡くした主人公とその姉は、母の再婚相手でろくでなしの父親から逃げるように上京し、プロボクサーを目指す。


「リンかけほどの秀逸なラストを迎えた作品は他にない」

リングにかけろは週間少年ジャンプに連載されていた漫画。 当時としては考えられないほどの大ヒットとなり、もはやそれは伝説と言えるほどとなっている。

物語の序盤は熱血スポーツ根性漫画と言える、極貧の主人公とそのパートナーである姉の生活から、 本格的にボクシングを始めるまでが描かれている。 「あしたのジョー」や「がんばれ元気」など他のボクシング漫画と違い、 パンチの打ち方やその大切さを重視したセリフや内容も多く、 本格的なボクシング漫画と言っても間違いではない。

中盤からは大会などによる対戦が主になり、 この頃から同作品の人気は急上昇していく。 それ以降は本格的なボクシング漫画から逸脱し、 必殺技とも言えるパンチを主要人物に持たすようになっていく。

これらの事から、この作品は「前半はスポ根漫画」、「後半はヒーロー対戦漫画」と言える。 どちらが良い悪いではなく、一つの作品でそれらが共存している事が珍しい上、 各々が秀逸なストーリーとなっている。 個人的には前半の方が好みなのだが、後半はまさに少年の夢が描かれていて、 例えば阿修羅編などのような、「俺を置いて先に行け」的なシチュエーションはグッと来るものがある。

終盤では物語の序盤から登場するライバルと対戦することになり、 連載中には空前絶後の盛り上がりを見せる事になる。 それはジャンプ史上初めてのことで、「ドラゴンボール」や「ワンピース」ですらない現象といえる。 後のいわゆるジャンプ黄金期である、「キン肉マン」や「北斗の券」、「奇面組」などなどが大ヒットしたのも、リンかけ効果による読者数向上によるものだと言っても過言ではない。 最終話が近くなると物語はドラマチックに展開し、試合そのものよりこれまでに登場した対戦相手などのセリフが秀逸で、 劇的なラストを迎え、言葉では言い表せない満足感を得る事になる。 個人的に言えば、リンかけほどの秀逸なラストを迎えた作品は他にない。

この作品を名作ではなくノミネートとしているのは、圧倒的に男性向け作品であることだ。 恐らく全てと言っても良いほど男性には支持されるであろうが、 女性から支持を得られるのは極一部と言わざるを得ない。 時代が流れる事で女性にも支持される時が来れば名作としたい。