下弦の月(かげんのつき)

 作者

矢沢あい

下弦の月 1 (りぼんマスコットコミックス (1114))
 出版社

集英社

 あらすじ

廃墟の屋敷で幽霊と出会った主人公は、友達と一緒に幽霊の願いを叶えるため協力することに。


下弦の月(かげんのつき)はりぼんに連載されていた矢沢あいの漫画。 「NANA」や「ご近所物語」、「天使なんかじゃない」など数々の大ヒット作を生み出してきた作者の作品の中ではシリアスなものとなっている。 それらのヒット作はどれもおもしろいが、比較的女性向けの作品だ。 同作品は性別は全く関係なく、誰が読んでもおもしろいものとなっている。

三巻という比較的少ない巻数にまとめられているということもあり、 一度読み始めると一気に全巻読んでしまいたくなる。 どんな作品でも一息つく話しが多々あるものだが、 同作品ではそれが一切なく、物語はテンポ良く進むため、 連載中にりぼんを読んでいた読者などは、 次のりぼんが発売されるのが待ち遠しくて仕方なかったのではないかと想像してしまう。

この作品の一番の魅力は、主人公を含める4人の小学生の子供たちだ。 設定上中学生でも高校生でも通用(良いという意味ではない)するのだが、 一生懸命取り組む様子が小学生ならではで、とてもよく合っている。 特に主人公の少女のやさしさや真剣さはついつい応援したくなってしまうし、 謎を突き詰めていき、一つ一つ解決していく姿は自分の事のように嬉しくなってしまう。

物語の中盤から終盤にかけて、全ての謎が集約されていくのだが、 正直ネタバレ要素を含まずに解説するのがとても難しい。 少し書いてしまうが、主人公が助けたいと思っている幽霊、イブの存在を仲間に信じてもらうシーンや、 指輪がイブの物であるとはっきり証明出来たシーンなどのシチュエーションは、 いかにも作者の作品らしくドラマチックで、 なんとも言えない感動と満足感が得られる。

「少女漫画だし〜」と敬遠している男性には特におすすめしたい作品である共に、 これを機に矢沢あいの他の作品も合わせておすすめしたい。